2010年12月27日月曜日

村上朝日堂

日刊アルバイトニュースという雑誌に連載されていたコラムをまとめたエッセイ集。村上さんの極めて日常的な諸事のエッセイに、安西水丸さんのポップな挿絵が添えられている。つれづれと生活の物事が楽に綴られた、現代的に言い換えればブログのようなエッセイ。後に現れる「遠い太鼓」のようなテーマ性は無いが、頭を空にして読んでいるとふと現れる本質を捉えた言葉に衝撃を受けることになる。
・私生活版、印象に残ったインサイト
「豆腐を食べるのに最も相応しいシチュエーションは、情事の後である」
・仕事版、印象に残ったインサイト
「日本だと情報はまずTVでやってきて、新聞で広がり、雑誌で補足され、書物で確認される」
村上朝日堂 (新潮文庫)村上朝日堂 (新潮文庫)
村上 春樹 安西 水丸

新潮社  1987-02
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2010年12月24日金曜日

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

元ソニー株式会社カンパニープレジデント・グーグル日本法人社長による、ビジネス戦記。ソニーにおける「筆者の敗戦記」を通して「ソニーの敗戦記」を垣間見る構造になっている。、グーグルやアップルとの比較を通じてソニーという日本発のグローバル企業の課題を抽出することは、単純な産業論以上の意義を感じる。

ソニーとグーグル。対照的な昨今のパフォーマンスにも関わらず相通じる理念、そして著者の敗戦を招く大組織の不合理、これらが読みどころとなっている。中でも、ソニー設立趣意書に刻まれた理念への言及が興味深い。

設立趣意書が示唆する、ソニーの限界と素晴らしさ

「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」(会社設立の目的より)

「極力製品の選択に努め、技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。また、単に電気、機械等の形式的分類は避け、その両者を統合せるがごとき、他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行う」(経営方針より)

この他社の追随を絶対許さざる境地に達したエンジニアの誇りが、ソニーのブランド力を支えていた。本書からは、娯楽家電の競争のポイントがハードからソフト(アプリ)へ、やがてプラットフォームへと移行していく中、上記のコンセプトを体現した過去の圧倒的な成功体験と、外部環境に合わない切り分けとなってしまったカンパニー制が生む縦割りの弊害が、ソニーの競争力を奪っていったことが伺える。

そんな、著者と共に敗退していくソニーとは対照的に、ソニーの本質を体現している企業として新天地であるグーグルが挙げられる。社会的利用度の高いプロダクトを生み出す、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想の職場として。この点に感じる哀しさを、単なるノスタルジアとして片付けないことが、急速な外部環境の変化への対応を迫られる多くの日本企業にとって、重要なことなのではないだろうか。


グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれたグーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた
辻野晃一郎

新潮社  2010-11-22
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2010年12月23日木曜日

的を射る言葉

森先生の過去のweb日記から「本日の一言」を抜粋した、名言集。あとがきより、本書の要諦を引用。「どちらかといえば、いかにポイントを外すかがポイントと言っても良いのである。(中略)多少斜めに睨み、僅かに外れているけれど、ぎりぎりでかすっている、といった鋭さの方がむしろ、真に「切れる」言葉の条件だと思えるのだ。」独自のインサイトで物事を捉え直し、一般に「白」と信じられていることを「黒」だと反転させる。的を射る言葉は発せられる前提は、独自の観点を有していることなのだろう。
108もの名言が紹介されていますが、個人的には、これが一番面白かったです。「よく28号まで予算が続いたな、鉄人」
的を射る言葉 Gathering the Pointed Wits (講談社文庫)的を射る言葉 Gathering the Pointed Wits (講談社文庫)
森 博嗣

講談社  2010-11-12
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2010年12月22日水曜日

ゾラ・一撃・さようなら

森先生の単発作。殺し屋、探偵、財宝、資産家、及び魅力的な女性を構成要素として編み上げたハードボイルド小説。作中の独白より、Vシリーズを読む中で漠然と抱いていた疑問に一つの仮説を得られたことが収穫。なるほど、「天使の演習」とはそういう意味なのか。この実に含みがある格好のよろしい言葉を、あくまで控えめに、一見ただの小道具として扱う。その抑え気味の上品な匙加減により、ありがちな構成要素ながらもありがちな小説になることを回避している。
ゾラ・一撃・さようなら (集英社文庫)ゾラ・一撃・さようなら (集英社文庫)
森 博嗣

集英社  2010-08-20
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2010年12月7日火曜日

ηなのに夢のよう

Gシリーズ6作目。次々に奇妙な場所で発見される首吊り死体を巡り物語は動いていくが、話の重心は真賀田四季の関わりや飛行機事故の真相といった、世界観全体の根幹に関わる要素に置かれている。Gシリーズに通底する後味の悪さは、そもそも各エピソードの現象が「事件」として捉えられるか曖昧であり、それぞれの中で動機が提示されず、シリーズ全体を通して初めて浮かび上がる構造になっているためか。本作はそんな特徴が際立っており、シリーズ全12作の折り返しに相応しい。
ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)
森 博嗣

講談社  2010-08-12
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2010年12月6日月曜日

2010

個人的に誕生日を基準として一年をカウントアップしているので、
これにて終了となった2010年度。トピック別に「ベスト」を振り返ります。
(※書籍等は発売日ではなく、体験した時点を基準としています)

<エンタメ>
・ベストシーン
 グアムのウェスティン近くのビーチで見た夕陽
 よくある壁紙集のような、非現実的な光景でした。

・ベストコンサート
 高鈴Live@原美術館
 ストリングスを伴い歌われた「夜にうもれて」は本当に印象的でした。

・ベスト美術展示
 奈良美智さん「セラミック・ワークス」@小山登美夫ギャラリー
 立体・陶器となったあの女の子の、たゆんとした頬の線。最高でした。

・ベストホテル
 富士屋ホテル@箱根
 伝統と格式の大切さを再確認。
 雰囲気、サービス、カレーが印象に残っています。

・ベストBar
 anotherdoor@恵比寿
 異空間かと思わせる雰囲気に心酔しました。
 パーティや料理教室も充実しており、実に居心地の良い時間を過ごせました。

・ベストゲーム
 真・女神転生 STRANGE JOURNEY(アトラス)
 難易度、世界観、システム、三拍子そろって素晴らしい出来でした。

・ベストノベル
 最後の物たちの国で(Paul Auster)
 全てが朽ちていく地獄からの手紙。
 希望がさらなる絶望を招く衝撃は小説ならではの威力だと思いました。

・ベストCD
 該当なし

・ベストおでかけ
 カピバラ詣で@市原ぞうの国
 念願叶って、実物のカピバラに触れることができました。
 餌をやり、撫で、追い掛け回す。その至福。

<食>
・ベストレストラン
 墨絵@新宿
 信じ難いコストパフォーマンス。
 5千円未満で文句のないコースが堪能できます。

・ベスト焼肉屋
 亀戸ホルモン@恵比寿
 上ミノ、上ハラミ最高。アクセスも良し。(次点:ミート矢澤、牛の蔵)

・ベストケーキ
 パティシエール葉山@鎌倉
 流石の上品な甘さ。焼き菓子も美味しかったです。

<ビジネス>
・ベスト達成事項
 転職
 お陰さまで、非常に充実した日々を送っております。
 嘘のように幸せです。

・ベスト流行語
 握る
 事前に合意、了承、好感を得ておいて、物事を円滑に進めること。
 ロジック病の反動か、この一年こればかり言っていた気がします。

・ベストビジネス書
 あえて、「ハゲタカ」(真山仁)
 上記の「握る」スキルを磨くという視点で読むと、単なる経済小説の枠を超えて、実に有用なテキストとなります。
 先まで予測して手を打ち、「負けない」ことの重要さを学びました。

・ベスト進化したスキル
 ワークプランニング
 この一年、リーダーを経験したこともあり仕事の設計力が飛躍的に伸びました。
以前は仕事をすることは自分が手を動かすことでしかなかったのですが、チームメンバー、クライアント、有識者、など他人のリソースを巧くコーディネートして仕事を進めることを習得し、能率が大幅に上がりました。また、質・量共にどこまでやるかスコープを見切ること、リスクを予見して対応策を練ること、なども習得した関連スキルとして挙げられます。

一言で言えば、飛躍の年でした。
色々な事がありましたが、これらの多くを共に体験し、ずっと後押ししてくれたパートナーに最大の感謝を贈り、
一年の締めとしたいと思います。
ありがとう。

2010年12月3日金曜日

λに歯がない

Gシリーズの5作目。 研究所の一室で歯が抜かれた4人の死体が発見される。物理的な密室の要因を解くポイントは、なぜその場所で事件は起こったのか。いつものようにその点から思考を進めていけば比較的容易に思い至ることができる。興味深いのは一連の事件との関連と動機。一連の示唆に絡む事件と思われるからこそ、機能するトリック。
λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)
森 博嗣

講談社  2010-03-26
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2010年12月2日木曜日

εに誓って

森ミステリー、いわゆるGシリーズの4作目。
バスジャック事件にシリーズの主要キャラクタが巻き込まれる。
バスという閉じた空間、「密室」コンセプトの拡張ケースか。
ポイントは以下の三点。
1.「犯人グループ」によるバスジャック
2.バスジャックなのにトリック
3.自殺の位置づけ

1.「犯人グループ」によるバスジャック
バスジャックが犯人の想定通りに進行しなければ、外部に居る仲間が爆破テロを起こすという、ある意味ちゃんと保険がかけられている犯行。この車中の犯人さえ何とかすればいい、という安易さを回避している点が面白い。

2.バスジャックなのにトリック
犯人について、居場所、行動、誰なのかが極めて明確に特定されるバスジャックという状況にも関わらず、ちゃんとトリックは仕掛けられてる。この仕掛ける視点の巧さには唸らされる。

3.自殺の位置づけ
ロジカルなクラフトマンシップを発揮して作り込みながらも、こっそりと抽象的なテーマを通奏低音のように織り込む森先生。今回のテーマは「自殺」であるように思える。引用されたヘッセのシッダールタ「死のうとするものはみな永遠の生をみずからの中に持っている。」と、作中のあるキャラクタの「そうだ、自分は自由。これからも、ずっと・・・」。単純に逃避とも悪とも整理できない、固定された穏やかさを感じさせる。

対比として、わからないから、もう少し生きるという判断もある。
気持ちを固定できないから、まだ揺れているから、もう少し生きる。
その生温い温度は、死を内在した生として、とても素直な感覚であるように思う。


εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)
森 博嗣

講談社  2009-11-13
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2010年11月30日火曜日

批判者に留まらないように

日経web、インターネットイニシアティブ(IIJ)社長鈴木幸一氏のブログより引用。

「そもそも、批判を生業(なりわい)としていた人や組織が、自ら国の指導者となり、国家を運営する立場に変身することほど、難しいことはない。批判者としての振る舞いと、自ら国家を運営することは、その行動様式はまったく違ったものである。」

引用元では民主党政権への批判という文脈で語られていますが、普段の生活にも言えると思うので自戒を込めてメモ。確かに批判的思考は重要だが、批判者に終始するようではリーダーシップは伴わない。

2010年11月29日月曜日

あしたのための「銀行学」入門

元マッキンゼーのパートナー・リテールバンキングプラクティスリーダーが解く銀行のビジネスモデルと課題。筆の運ぶまま銀行のビジネスモデルと課題について広範に論じられており、中でもポイントとして、以下の三点が挙げられる。

1.「貸し渋り」で責められるべきは銀行(だけ)ではない
2.日本の銀行は収益性が低い
3.本質は21世紀の中小企業問題

1.「貸し渋り」で責められるべきは銀行(だけ)ではない
要するに、そもそも貸し先の中小企業の業績が落ち込んでいるから、貸したくても貸しようがないという話。

・中小企業のうち、貸し渋りを受けた(=以下のパターン。希望通りに融資を受けれたが条件が厳しくなった、希望よりも融資額が減額された、融資を謝絶された)のは、12~17%に過ぎない。一般的に住宅ローン申請の3割が断られることを考慮すると、決して高い水準とは言い難いか。

・そもそも、銀行もビジネスなので、返済してもらえないリスクが高いと合理的に判断できる理由があれば、道義的に不当な「貸し渋り」ではない。論点3にもつながるが、中小企業一社あたりの売上高はバブル期前の80年代前半に比べて半減している。

・その証左として、中小企業融資に特化した新銀行東京や日本振興銀行は、危機に瀕したり破綻している。

2.日本の銀行は収益性が低い
英米に比べて一貫して低水準にある邦銀の収益性。ではコストが高いのか、というとそんなことはない。一般管理費のような内部コストはかなり抑えられ低水準にある。(※貸倒引当金といった信用コストは本書で深堀されていないので省略。)
問題は収入面にある。低水準の金利、そしてそもそも金利を抜くビジネスモデルの限界。収入向上の施策として挙げられている金利の引き上げ、投信や保険の販売会社化の進展は当然の流れか。
(余談だが、経営効率向上の施策として挙げられている地銀の統合推進は、「なぜ劇的に進展しないのか」という課題設定の下深堀すると、様々な論点があるかと思われる。)

3.本質は21世紀の中小企業問題
結局は、借り手が元気にならないと銀行のビジネスも立ちいかない、ということ。本書ではそういった文脈で、中小企業の課題と施策が論じられている。銀行がグループとグループを媒介する中間的なビジネスモデルである以上、根本的な問題は媒体自体よりも、やはりグループにある。経営統合や健全な廃業を保証する仕組みづくり等の施策で中小企業の収益性が改善しない限り、中小企業融資で収益を上げることは困難であり続けるのだろう。

銀行論を論じていたら、いつの間にか中小企業論になっていた。
この健全な論旨を幹に、銀行の課題を幅広く論じた良書。
あしたのための「銀行学」入門 (PHPビジネス新書)あしたのための「銀行学」入門 (PHPビジネス新書)
大庫 直樹

PHP研究所  2009-06-19
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2010年11月25日木曜日

高収益企業のつくり方

元京セラ会長で現JAL会長である名経営者、稲森氏が、自身が主催する勉強会「盛和塾」での塾生との問答を通して披瀝した、経営の要諦。本書で言及される経営のポイントは、以下の三点に集約される。
1.既存事業の収益性を高める
2.経営理念を明確にし組織に浸透させる
3.従業員の幸福を追求する

これらの中でも、1.と3.が気になりました。
1.既存事業の収益性を高める
「安易な多角化や新規事業に走る前に、財務体力をつけるために本業を高収益体質にする」、極めて健全で正しい考え方だと、改めて感じました。典型的な高コスト体質であるJALでどう実現させるか。

・目標(定量的):売上高税引き前利益率10%の実現。
・コンセプト
簡単に言ってしまえば売上-コスト=利益なので、徹底的にコストを抑え、競争が激化し売上が落ち込んでも利益が出せる体質にすることが、肝要と説かれています。本業で利益を出し財務的な体力をつける。それができなければ、存続は言うまでもなく、会社に継続的な発展をもたらす新規事業を立ち上げることもできなくなるからです。

・施策
勘定科目を細分化してコストを可視化し、少人数の採算管理単位である「アメーバ」にごとに損益管理し、PDCAを回すことが挙げられています。この点に関しては、別途アメーバ経営について深堀りした本でスタディしてみたいと思います。

3.従業員の幸福を追求する
著者の「全従業員の幸福のために会社は存在する」という考えは一周回って新しく響きます。旧来の教義である一株当たり利益の最大化が、今なお株式会社の至上命題なのだとしても、やはり前提として利益を生み出せる源泉が必要であり、それは優秀で会社への貢献意識の高い従業員なのではないでしょうか。直近のハーバードビジネスレビュー(2010年12月号)『人を潰す会社 人が輝く会社』で特集されているように、従業員の幸福なくして中長期的な繁栄はあり得ないと、改めて思います。


稲盛和夫の経営塾―Q&A高収益企業のつくり方 (日経ビジネス人文庫 (い1-2))稲盛和夫の経営塾―Q&A高収益企業のつくり方 (日経ビジネス人文庫 (い1-2))
稲盛 和夫

日本経済新聞出版社  2007-11-05
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2010年11月20日土曜日

Win-Win

超氷河期と言われるほど激化している、昨今の就職活動。
・「就職内定率最悪、焦る学生 厳しい企業の目」/日経web(11/16)
・「就職内定率:過去最低 「ここまで長引くとは」せっぱ詰まる大学生」/日経web(11/17)
・「大卒内定率、最低の57.6%=「就職氷河期」下回る-10月1日時点」/時事ドットコム(11/16)

私が就職活動を行ったのは金融危機直前、いわゆる「売り手市場」の時でした。頻繁にかつ熱心に開催される様々な企業の説明会に足を運び、会社説明を拝聴する中で、悪い意味で最も印象に残ったのが「Win-Winの関係」という言葉でした。
「顧客やビジネスパートナーとWin-Winの関係を」という文句は当時業界問わず耳にした覚えがありますが、その軽薄な響きやそんな都合のいい取引なんてあり得るのか、という猜疑心から、どうしても好きになれない言葉でした。

しかし、就職して経験を重ねるとそんな認識が誤っていることに気づき、逆に改めてそのコンセプトの重要性を感じるようになりました。(相変わらず言葉としては全く好きになれませんが)

当時「Win-Winの関係」は「お互いが平等に得する関係」であるかと思っていましたが、そうではないのです。そもそも基本的に、マトモな商売であれば、片方が完全に得してもう片方が完全に損をするということはありえません。関係や取引が成立する以上、それは必ず「Win-Winの関係」なのです。
本当に重要なのは、どの程度のWinを得る、与えるかの配分を見極めることにあります。一見平等に見え(せ)て、実際に得られるWinの割合が当方:先方=7:3であっても、また逆であってもそれは「Win-Winの関係」なのです。短期的に稼ぐか長期的に稼ぐかという時間軸や、関係を成長させたいか収縮させたいかという期待度を考慮し、Winの配分を見極めること。幼稚だった当時とは違い社会人となった今、それは確かに、企業活動において非常に重要なコンセプトなのだと思います。

就職活動をしている学生の方は、企業の担当者から「弊社はWin-Winの関係構築を重視しています」と言われたら、「なるほど。例えば、それはどういった事業領域でどのような顧客とどの程度の関係構築に注力されているのでしょうか。私見では~かと思いますが、お聞かせ下さい。」
とでも答えてみて下さい。
斜に構え、心のなかで一笑に付していた当時の私などよりも、ずっと高い評価を得られると思います。

2010年11月17日水曜日

プラットフォーム戦略

おサイフケータイの構築と普及に尽力したビジネススクール講師による、プラットフォームビジネスの定義付けと解説。

メディアで好調な企業のビジネスモデルとしてよく聞くが、しかしよく説明できない「プラットフォーム」。Amazon, 楽天, Apple (iTunes Music Store), Facebook, DeNA・・・。これらの企業はなぜ好調なのか?
本書の価値はプラットフォームの定義、特徴、および参入の際に留意すべき点を明記した点にある。

以下二点が腹に落ちれば、上記の疑問に答えるための端緒は掴めるかと。
・プラットフォーム戦略とは、複数のグループを、共通の「場」に乗せることによって、外部ネットワーク効果を創造し、新しい事業のエコシステムを構築する戦略である。
・プラットフォームには、複数の異なるグループのマッチング機能、オペレーションコストの削減機能、ブランディングによる検索コストの低減機能、外部ネットワーク効果機能、コミュニケーションを媒介する三角プリズム機能がある。

・ハードルの高い「プラットフォーム戦略思考」
今(将来)のビジネスで成功する人材の要件として、「プラットフォーム戦略思考」を有していることが挙げられている。
そしてそれは、「多様な考え方を理解し、顧客のニーズを把握するだけでなく、その場で問題解決を行う思考力をもった社員、自社の製品やサービスが満たしている『本源的な欲求』が何かを認識・把握し、顕在化していない次のニーズを予想し、国内外を問わず競合商品やサービスの動きを迅速にとらえ、IT化やグローバル化、技術革新の動きなどを正確に認識したうえで、それらを戦略として経営層にフィードバックすることができる人材、そのビジネスモデルを構築できる社員、さらに企業の枠を超えたアライアンスを推進できるエバンジェリストともいうべきコミュニケーション力、人脈力をもった人材」と定義されている。
網羅性は十分過ぎるほどだが、それ故印象に残りにくいので、プラットフォーム戦略の推進にとりわけ必要な能力、として必要条件のみ抽出し十分条件を省くか、優先順位付けをするなどして再整理したほうが理解し易いか。

・その特徴から演繹的に理解するよりも、各社のケースを積み上げて理解すべき
そもそも抽象度の高いビジネスモデルなので、本書で言及している定義、特徴や参入のアプローチを頭に入れるだけでなく、各社のケースを分析しなければ、人に語れるレベルの理解に至らないように感じる。あくまでもプラットフォームビジネスの概要と要点を理解するための入門書という位置付けで読むべき。
プラットフォーム戦略プラットフォーム戦略
平野 敦士 カール アンドレイ・ハギウ

東洋経済新報社  2010-07-30
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2010年11月15日月曜日

大学の話をしましょうか―最高学府のデバイスとポテンシャル

元名古屋大学工学部助教授にして、小説家でもある森博嗣先生が、大学の意義とそのシステム上の欠陥について、インタビュー形式で論じています。
・教官が付加価値を生む、本来の仕事に注力できなくなっていく
大学の教官の役割は、教員、研究者、そして事務員の3つであり、助手、准教授(助教授)、教授と昇進していくに従って研究費の申請や大学の運営会議といった事務的な側面の仕事が増えていく。このポジションが上がり報酬は上がる一方で、付加価値の低い仕事の比率が増えているという矛盾が、大学がそのポテンシャルを十分に発揮出来ていない一因であるように思えます。大学の唯一のコンテンツであり、競争力の源泉であり、本質は所属する研究者にあります。研究者が付加価値を生むロールを最大限発揮できるような環境を整備する(事務処理や大学の運営を専任で担当する人材が居て、教官は研究と教育に重点を置いて活動できる等)ことで、より効率的に大学の力を高められるのではないでしょうか。
・大学(院)で学ぶことの魅力は、研究者の姿勢を見ることにある
著者は大学(院)の魅力は、研究者を間近に見て、勉強そのものの楽しさに触れることだと述べています。また視点を教える側に変えてみると、「教育というのは、先生が生徒に力を見せるものなんです」と断言しています。非常に優秀であり、その上研鑽を積んでいる教員の姿から、間近で学ぶ姿勢を学べるのならば、それは大学のポテンシャルの発揮として、この上なく豊かな体験となるのでしょう。
大学の話をしましょうか―最高学府のデバイスとポテンシャル (中公新書ラクレ)大学の話をしましょうか―最高学府のデバイスとポテンシャル (中公新書ラクレ)
森 博嗣

中央公論新社  2005-10
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2010年11月14日日曜日

BCG流競争戦略

BCGのシニア・パートナーによる、金融恐慌後の長期的停滞が見込まれる先進国経済の下、どういった経営戦略を立案すべきかの示唆を、過去の不況下(アメリカ大恐慌、日本の失われた10年)に成長した企業のケース・スタディを通して抽出する試み。
過去のケースで取り上げられた優良企業から抽出される戦略の要諦は、 簡単に言えば、「好況期にしっかりと守りを固め、競合が尻込みする不況下に積極果敢に攻める」ということ。
・好況時には浮かれず、「守り」を固め筋肉質な組織へ
この逆張りの視点のうち、好況時にしっかりと守りを固める、という点がとりわけ重要だと思う。 好景気時にも関わらず、不採算事業の撤退とコストカットを判断した信越化学工業の毅然とした判断には敬服する。 場合によっては機会ロスになりかねない撤退の判断を迅速に行い、強みに経営資源を投入することで、磐石な財務の下不況下を勝ち抜くエッジとしている。
・不況下でも「人材」という筋肉を削がない
また、大恐慌時のIBMの福利厚生の充実により人材を重用する戦略も、事業、財務、人材が揺らぎ無い状態でなければ勝ち上がれない原則の下では、 むしろ王道であるように感じる。体力があることが前提だが、今日の従業員を変動的な人件費として扱う戦略も、 程度が過ぎれば筋肉のない骨ばかりの組織となり、ダッシュ力が無くなっていくジリ貧のスパイラルに陥るのだろう。 今の私の個人的な関心分野「人材に見限られる企業」の処方箋と言えるかもしれない。
・政府の関与に商機を見出す
将来の事業環境を見据えた視点では、活発化する政府の関与を活かして商機を見出していくことが、(業態は限られるだろうが)重要となる。 経験から言えることだが、政府の介入によるビジネスで成功するには、コンソーシアムや各種審議会への参加により、 トップマネジメントが政策決定において存在感を発揮していることが非常に重要となる。 この点に関しては、先進国だけではなく、元々政府のコントロールが強い新興国の攻め方においてさらに強調されるだろう。
歴史は繰り返すことを感じつつも、「勝って兜の緒を締めよ」が肝であることは、いつの世も変わらない。

BCG流 競争戦略 加速経営のための条件BCG流 競争戦略 加速経営のための条件
デビッド・ローズ ダニエル・ステルター 内田 和成

朝日新聞出版  2010-10-07
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2010年11月9日火曜日

新たにTVを買うために答えなければならないこと

昨日ヤマダ電機総本店でソニー(BRAVIA)の40インチ液晶テレビを買ってきました。

型番:KDL-40EX500
価格:\75,000 +ヤマダポイント12,000 +エコポイント23,000
⇒ヤマダポイントとエコポイントを控除したネットコスト:\40,000
(※同モデルの価格.com最安価格:72,700)

以下、今回の購入にあたっての検討メモ。

■なぜ買うのか
・プライベートの理由
-社会生活のプロトコルとなる基礎的な情報を収集するため

・ビジネスの理由
-仕事上最新のIPテレビサービスの動向を追う必要が生じたため
-U-NEXTのようなIPマルチチャンネルサービスに加入し海外ドラマを視て、楽しく気軽にかつ習慣的に英語に親しむ環境を構築するため

・制度対応
-現行のブラウン管・アナログ・モノラルTVが、来年夏の完全地デジ化と同時に、ただのオブジェと化すため
-エコポイント制度の恩恵を享受することで、投資資金の3~4割をを事後的に回収することが可能であるため
※エコポイントをEdyに交換することで、日々の運転資金に転用することができる

■何を買うのか
・型:40型の液晶テレビ
-部屋のキャパシティ、満足度、エコポイント(40ならば23,000だが、37になると16,000と7,000減額されてしまう)を総合的に判断

・ブランド:SONY BRAVIA
-個人的に思い出と思い入れがあるメーカーなので、これ一択

・求める機能のレベル:「色がついて映ればよし」
-なにしろ96年製のブラウン管テレビからの移行なので、ボディの厚みや画質やバックライト(LED or 蛍光灯)は投資決定の論点にならない
-録画機能は載せるか悩ましかったが、IPマルチチャンネルサービスのオンデマンド視聴が中心になると思われるので、価格差ほどのバリューは見いだせないと判断
-5~7年での買い替えを想定しているため、基礎的な機能で構わない

■どうやって買うのか
・家電量販店で相対で購入
-確かに、価格.comで顕著なように中小販売店から通販で購入するほうがよりコストを抑えられるかもしれないが、以下の理由より量販店での購入を決定
*量販店の安値との差額は数千円に過ぎない
*量販店で販売員から説明を受けることで検討の抜け漏れをチェックできる
*大規模投資は実際に現場で交渉を通して買ったほうがテンションが上がる

■どこで買うのか
・ベンダー:ヤマダ電機
-リーディングカンパニーは価格交渉力があり仕入れ値が安く、やはり価格競争力があるのではないか

・店舗:日本総本店
-ビックカメラと本店が並ぶ池袋。噂に従い価格感度が高い客が集まるならば、より激しい価格競争が起こっているのではないか

・時間帯:平日の閉店間際
-週末には価格にうるさい客が地方から集まるはずなので、価格を抑制するならば週末に買うべきのように思えるが、過剰な客数により店員のサービスの質が低下、購入手続きのために長時間並んで待つ等、買い物自体の不快指数が跳ね上がることが予測される。よって、平日に購入すべきか
-閉店間際ならばその日の売上をより多く確定させたいとのインセンティブが働くので、値引きし易いのではないか

■いくらで買うのか
・想定レンジ:価格.comの最安値プラス3,000円
-短期的な投資資金抑制を第一としたいので基本は現金割引を検討するが、ポイントの付与率や、友人が同様の投資を考えておりポイントを「譲渡」することで一定のベネフィットを回収できる等特段の事情があれば、ポイント付与による購入も検討に入れる

以上の検討を経て購入しました。
届くのは来月の私の誕生日。楽しみです。

2010年11月8日月曜日

NECが「SAP ERP」をSaaS提供

前職で少々関わったことがあり、全く違うことをやっている今も一応関心領域ではあるのでメモ。
NECSAPの「SAP ERP」の機能を、自社データセンターを通じてクラウドサービス形式でユーザー企業に提供するとのこと。

http://japan.zdnet.com/news/ir/story/0,2000056187,20422415,00.htm

基幹業務を支えるシステムもクラウドで課金サービスとして利用する時代へ。
内製→個社ごとパッケージ買って弄ってハメ込み→SSC等企業グループ内で集約化し企業内で貸し借り→企業内を超えて他社から借りる、という流れか。情報インフラ関連の担当者にとって選択できるオプションが広がるとはいえ、業務やコードの標準化が大前提かつ最大の課題である点は変わらないかと思います。

2010年10月27日水曜日

偽名でプロバスケットボール選手を目指すことになるか

英語をブラッシュアップする必要性を感じ、
大手町の某大手英会話スクールに説明を受けに行ってきた。

受講前カウンセリングにてカウンセラーの方に学習の目的を訊かれ、
「短期的には日々の業務のため、長期的にはアメリカへのMBA留学のため」と答えた。
するとそのカウンセラーは頷きながら、
「なるほど、"N"BA留学ですね。場所柄そういった目的を持った受講生の方も多いんですよ。」と答え、カウンセリングシートにしっかり「"N"BA留学志望」と書いていた。
確かにコンサルからプロバスケットボール選手への転身というのは新しく、とても格好良く、この上なく魅力的に感じるが、英語以前に色々なボトルネックがある気がするのだが・・・
そんなキャリア選択をする猛者が集まるこの英会話スクール、私なんかではついていけそうもないと思い、その日は受講相談のみに留め後にした。

その後カウンセラーより受講の検討状況を尋ねるメールが届いたので開いてみると、
「**様~」、いきなり苗字が間違っている・・・
しかしこれは、「大胆なキャリアチェンジはリスクを伴うので、取り敢えずは会社に籍を残しながら偽名でトライアウトを受けるのがいい」との心遣いだと受け取った。

怒りや呆れる感覚はとうに通り過ぎ、
次はどのポイントでどうやらかしてくれるか、ちょっと楽しみになってきた。

2010年10月18日月曜日

それを得ようとする以上に

何かを手に入れることと同じかそれ以上に、何かを捨てることは重要なのではないかと思う。
捨てるというか、見切るセンスか。
何を得ているかよりも、何を捨てているかにその人の本質が現れるのではないだろうか。
基本的に(程度の差こそあれ)あらゆる選択はトレードオフであるという前提と、
黙っていてもモノや情報が押し寄せてくる時代だからこそ、余計に。

2010年9月23日木曜日

30年後の中学校では「歴史」が重要科目になるべき

国家の長期的な成長戦略は何か。
次世代を担う人材を生む「教育」でしょう。
それでは将来の成長を実現するためにあるべき教育の姿とはどのようなものか。
結論から言うと、「歴史」が重要な科目になるのではないかと思います。

高速インターネットへの常時接続が常識となった世界が訪れることで、
学校教育のプログラムは歴史上最大の転換点を迎えるでしょう。
インターネットによって膨大な知識へのアクセスが容易かつ非常にローコストになり、
知識の多寡はもはやその人物の価値とはほとんど関係なくなる。知らなければググればいい。
膨大な知識のアーカイブへいつでもアクセスできるのだから。そういった常識がより顕著な世界が到来します。

そんな時代に学校教育は、知識を詰め込むよりも「今どの知識が、どの程度の確度で必要で、いかに使うべきか」
という知識の使い方を習得する場となるでしょう。いえ、そうならなければならない。

重要な科目は何になるのか。
数学や化学などの理系科目は変わらず重要であり続けるでしょう。
元よりアウトプット志向の学問ですしテクノロジーの進歩にも適合する。
逆に比較的不要になるのは英語でしょう。
ほんやくコンニャク的なテクノロジーが授業による習得を陳腐化する可能性が高い。

ここで台頭するのは歴史だと思うのです。
もちろん、年号などの資料集にある知識を詰め込むやり方ではなく、
アウトプット志向のケーススタディ的な授業が。

将来の授業では知識は簡単にさらう程度に留め、
各イベントごとに「当事者」となって戦略的な判断を思考し議論を行うようになる。
より変化が早く不確実な状況で生きていく下地とするために。

例えば以下のような点について議論し思考を深めていく。
・桶狭間の戦いの背後にあったオプションとそれぞれのメリット・デメリット、
 実行にあたってのリスクは何であり、最終的にあなたならどう判断するか。
・ローマ帝国や元など強大な帝国が支配範囲を拡張するために前線への兵站を繋ぐにあったって、
 ボトルネックとなるものは何か。
・征服地域から発生する反乱の類型と対処方法は何か。(君主論を参考に)
・スキピオとハンニバルの戦略の類似点と相違点は何か。
・あなたがナチス第三帝国の有力閣僚でありながらホロコーストに強い疑問を抱くようになった人物だったなら
 どのような葛藤を感じいかに解決して行くのか。

歴史を当事者として振り返り、各シチュエーションで考えるべき論点を見出し、
場合によっては対立する価値観を擦り合わせ、意思決定していく。
それが将来不確定な意思決定を行う際に役に立つ。

参戦可否などの戦争判断はいつどのマーケット攻めるかというマクロな競争戦略に、兵站はSCMに、
戦略論は限られた資源(ヒト、モノ、カネ、時間)でいかにして勝利を得るかのミクロな戦略論に、
征服地の治世は異文化コミュニケーションやPost M&Aに、ファシズムとの葛藤は自発的なモラル観への示唆を育む。

このような授業がより知識の使い方が求められる将来の教育の根幹となれば、
環境変化が加速しても国家は継続的な成長を遂げられるのではないかと思います。

2010年8月23日月曜日

転職します

ささやかな縁といくらか思うところがあり、
現職を8月末付けで辞し、
経営コンサルティングファーム@丸の内への移籍を決めました。

転職に際して敬愛する友人から贈られた言葉。

“Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life.
Don’t be trapped by dogma — which is living with the results of other people’s thinking.
Don’t let the noise of others’ opinions drown out your own inner voice.
And most important, have the courage to follow your heart and intuition.
They somehow already know what you truly want to become.
Everything else is secondary.”

(Steve Jobs, in Stanford univ. June 12, 2005)

それは私の思うところに共鳴する。
だから育った家を去る決心ができた。

梅雨の頃から遠い太鼓が聞こえていた。
私の内でその音は響き、舞台の変更を告げ続けていた。
「向かうがいい、どこであれそれが見つかりそうな場所へ。」

2010年8月13日金曜日

Recent Trademark Phrases

最近の口癖からStyleやAttitudeの傾向を読み取ってみる。
(※BusinessもPrivateも含めて。)

以下3つの口癖が増えてきたように感じる。

・「センス」
知人やチームメンバーを評する際に重視するCapabilityが、
頭の回転、ドキュメンテーション、危機回避能力など定形なものから、
「センス」という不定形なものに変わってきた。
(機会があれば改めて思考を纏めたいが、
仕事にせよ付き合いにせよ「センス」はかなり重要な要素だと思う。)

「彼、センスある(ない)よね。」「うんうん、ある(ない)よね。」という流れで
人の噂をすることが多い。かなり主観的で不公正に見えるが。

適切に噛み砕いて説明できないので例を挙げると、
「~というタスクなんだけれど、どのくらいでできそう?」と訊いた場合、
・センスがない回答
「大丈夫です。今日徹夜でやるんで、明日午前中にはできます!!」
・センスがある回答
「そもそもこのタスク~のためですよね。
とりあえず明日の段階で必要なのは~までだと思うので、
明日の段階で~までやって明後日に完了させます。それでいいですか?
あと、明日昼くらいに方向性合ってるか一度見てもらっていいですか?」
という感じになる。
(ちなみに実際にあったやり取り。タイプの違う二人の後輩と。)


・「建て付け」
タスクを依頼されたとき、「じゃあ~という感じの建て付けでやりますけど、いいですか?」と使う。
要は段取り+落しどころ、といったところ。
新人時代のように取り敢えず手を付けるのではなく、
手戻りを防ぐために考えてから仕事することができるようになってきた。


・「短期的には~だけど、長期的には~じゃない?」
近視眼的な、静的な状況認識が多かった新人時代に比べて、
時間軸を入れて動的に物事を捉える癖が付いてきた。
※実は痛いところを突かれた時、反論をかわすために使うことが多い。


そして、相変わらず私の一番の口癖であり続ける、

・「確かに」
BusinessでもPrivateでも本当によく口にする。
単なる合いの手の時もあるが、
基本的には「確かに~だよね。でもこう考えるとさ~」など、
一旦受けてから違う観点へと転がすために使用する。


口癖。その人のその時のキャラクターが出て面白いですね。
あなたの口癖は何ですか?

2010年6月25日金曜日

頑張らないし、頑張らせない

初のシステム導入案件@埼玉に入り、
これまでになくテクい仕事をしています。

今回の仕事のHowに関するポイントはただ一つ、
頑張らないし、頑張らせないこと。
(無理して徹夜などはしない)
もちろん、仕事の質を高く維持することは大前提ですが。

以下の観点から仕事を最高し、
「頑張ってしまうこと」を徹底的に排除して仕事をしています。

■そもそもの仕事量を削る
・その仕事は本当に必要なのか?
・その仕事は本当に私達がやる必要があるのか?
・その仕事は本当に今やる必要があるのか?

■やり方を工夫する
・その仕事は本当にその方法・手順でやらなければならないのか?
・その仕事をする上で既存の活かせる資料は無いか。
・そのやり方のうちツール(フリーウェア、マクロ)でできるところはどこか?

■手戻りやリスクを未然に防ぐ
・ミスやエラーは、可能な限り前の工程で排除しておく。
・上司の作業指示は絶対に上記の点を疑い更新する。
・1日8h稼働でスケジュールを組む。
 14h稼働とかで工数を積んで要員を設計すると、確実に遅延する。

頑張ってしまうことは簡単です。
確かにどんな仕事でも徹夜し続ければ終わります。
しかしデメリットも大きいと思います。
・頑張るとヘタに充実感があるため、仕事を工夫しなくなる。
・頑張ってしまう人は部下に同じように頑張ることを要求するようになる。
・頑張り続けると身体や人並みの生活に支障が出る。

私自身も後輩達にも、頑張らせてはなりません。

上記の検討における非常に優秀な後輩達の尽力もあって、
質を維持しながらもさくっと仕事をし食やサッカーを満喫しています。

2010年6月5日土曜日

押しも押されぬ街、押上

私を含む弊社の若手が多く住む街、押上。
(会社に近いアクセスの良さかつ家賃の安さのため)

墨田区のバビロンこと東京スカイツリーが建設されているという点において、
昨今東京で最も知名度を上げた街でしょう。
入社に伴なう上京で住み始めてはや2年、
来るべき引っ越しの前に私的おすすめスポットを挙げておきたいと思います。

・カフェこぐま
東京とは思えないレトロな「鳩の街商店街」に佇む、
昭和2年築の木造長屋を活用したカフェ。
レトロな空間に味わい深いランチ。
摩天楼を忘れ軽くレイドバックしたい時に。
http://r.tabelog.com/tokyo/A1312/A131203/13039956/

・麺・酒処 らん亭
艶街の一角に潜む居酒屋かつラーメン店。
あっさりした非常に品のあるラーメンが楽しめます。
水餃子も絶品。
http://r.tabelog.com/tokyo/A1312/A131203/13034740/

・窪田弓道研究会
東京第一弓道会会長を努める窪田史郎先生の個人弓道道場。
東京屈指の名門弓道場で日本文化の真髄に触れてみるのはいかがでしょうか。
見学歓迎。最近は30代女性と外国の方の入門が多いようです。
墨田区向島4-23-5

まあ、正確に言えば単に私の行動範囲なだけなのですが。
話題の世界最大級の仕掛品を見に押上までいらした際は、
是非ともお立ち寄り下さい。

2010年5月10日月曜日

三本の矢を放て

本日得た現在共に働いている凄腕の先輩からのアドバイス。
「目的達成のためには、最低でも三本の矢を放たなきゃダメだよ」

お客さんに施策を提案する時に松、竹、梅といった
インパクト/コストの異なる3案を提示することがあります。
施策の網羅感を示し不測のリアクションを避けるためです。
そのように複数のアプローチを並行的に用意して目的達成を目指すことは
自身の日々のタスクのこなし方でも言えるのですね。

オプションを静かに切り札として持っておく場合もありますが、
切り札の最も幸福な使い道は使わないで済むことです。
(名言「切り札は先に見せるな。見せるなら更に奥の手を持て。」を引くまでもなく。)

弓道をしている身としては一射必中を狙いたくなりますが、
一矢射て射抜けるのは弓道場のような静的な環境だからです。
ビジネスという動的な環境ならば、
常に三本放つくらいの慎重さで然るべきでしょう。

2010年5月5日水曜日

STRANGE JOURNEY

いろいろと画策したGWですが、
結果仕事以外で最も注力したのはNintendo DSプラットフォームのRPGゲーム、
「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」でした。

所詮ゲームと侮ることなかれ。
体験しないことは人生の少なくない損失の一つと言えるでしょう。
まだ序盤ですが、本当に面白い・・・

本作は女神転生シリーズというシリーズものの作品の最新作です。
大筋は例によって以下のようなものなのですが、
・世界が崩壊の危機に瀕している。
・選ばれた(結果として、の場合もあり)人間が危機を脱するために戦う。
・共に戦う仲間は、敵である悪魔を交渉し仲間にした仲魔である。
今回は人間世界の危機を生み出した原因が
「人間の行き過ぎた繁栄」となっているのが興味深いですね。

戦闘システムやゲームシステムも出色の出来なのですが、
私が本シリーズに強く惹かれるのはその世界観のためです。

シリーズで前回私がプレイした作品は「真・女神転生III」でした。
IIIでは崩壊した東京の中で新たなイデオロギーを確立するという世界観であり、
その本質的に自由なストーリーが非常に興味を引きました。

プレーヤーは世界の方向を自分で選らび、
力を添えていくことになります。
あなたは悪魔に与し混沌を求めてもいいし、
悪魔を掃討し正義の世界を屹立してもいいし、
どちらでもない独自の中立の道を歩んでもいい。
いずれにせよ取るべきスタンスでストーリーの結末は変化します。
勧善懲悪で敷かれたレールをただ映画的鑑賞的に進むのではなく、
手探りで世界を探索し新たな世界を確立していくところが本当に楽しい。

たまにはここ以外の世界を旅し、世界の崩壊が迫った時に、
自分は何を求め何を選び何のために動くのか擬似体験してみる。
そのように仮想的なインターフェースで異なる世界を主体的に感じ、
より巨視的な視野で私が今居る世界を見つめなおす契機とすることが、
今も昔も地に足が着かない私にとって一番の休暇なのです。

2010年5月1日土曜日

湖を沸かすのではなく

GWの宿題として業務改善用の定量分析を行っております。
集めたデータをエクセルでコキコキ集計・加工しています。

分析はプロジェクトの初期工程であり
若年者が行う比較的労働集約的な仕事でありながら、
その成否は後工程への影響が決して少なくはない重要なものです。
キレのある的を押さえた分析を行うことで、
後工程である施策立案・施策導入の精度やスピード、
そして説得力が大きく増すためです。

■分析の目的
私自身よく陥りやすい点なのですが、
分析の目的はまっさらな地平から洞察を炙り出す、のではありません。
手当たり次第にデータをいじるのでは工数が掛かり過ぎて非効率であり
また終了すべきポイントも見えてこないためです。

分析はあらかじめ自分が持っている仮説を検証するために行います。

・仮説の方向性は正しいか
・仮説の精度(ファクトとの合致度)はどの程度か
・因果関係は正しいか
 (逆因果や相関関係、第三因子の影響ではないか)

などの点を検証するために、

・観察事項の構成要素
・構成要素の構成比率
・構成要素の時系列変化
・2や3を他の事項と比較した際のGap

を確認していきます。

上記の目的を外して網羅的・発散的に分析をしてしまった時、
先輩から 「君は湖を沸かそうとしているんだよ。」と言われました。
分析に関して、これ以上に的確な指摘があるでしょうか。
相手が欲しがっているのはカップ一杯の紅茶で、
今必要なのはカップ一杯分のお湯なのに。

2010年4月21日水曜日

1Q84

読了したので感想を。エッセンスは以下のように感じました。
1.リアリティを失った世界と元の現実という複層的な世界構成が、幼い頃より連なる個人的で宿命的な希望を醸成する。
2.形而上的な、あるいは暴力的な試練の無いところに希望はない。
(逆に言えば、希望には試練が必然的に付随する。)
3.どこの、どのような世界に物理的に身を置くことになろうとも、「あなた」と手を取り合えることこそが私にとっての世界の全てである。
作品のバックグラウンドにあるのは、現代の、リアリティを失った世界認識であるのでしょう。
「ぼくが今のアメリカに行って、人々と話していて感じるのは、我々が生きている今の世界というのは、実は本当の世界ではないんじゃないかという、一種の喪 失感-自分の立っている地面が前のように十分にソリッドではないんじゃないかという、リアリティの欠損なんですね。」
(雑誌 Monkey Business vol.5 村上春樹インタビューより)
リアリティが欠けた世界、試練として現れる非現実的な暴力の影、そんな中でも致命的な愛情を信じること。世界に依存しない個人的な希望として。
とても同時代的な空気を孕みながらも、同時にとても古典的な幹を持った作品であると思います。
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村上 春樹

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2010年4月19日月曜日

Harder, Better, Faster, Stronger

先月から恵比寿のとあるWine Barへ足繁く通うようになり、
常連のお客さんを中心として、新たに様々な人達に出会いました。
クリエイター気質の人々が集まる店という性格もあり、
組織に属さず自らの手で何かを生み出している人々と。

そのような人々との出会いもあり、
最近私の中で私が惹かれる人の定義が
変わってきていることを感じます。

かつて小さな私の世界では、
分かりやすいラインキングに定義された序列が、
選ぶべき道や出会うべきものの判断に少なくない影響を与えていました。
大学(学部)なら東大、京大、
就職ならInvestment Bankや商社、Consulting、
やがてIvy LeagueでMBAを取って事業会社の経営企画や社会起業へ
という誰かが描いた、
もしくは集合知・暗黙知としてのロールモデルの影響。
そのために少なくないコンプレックスを抱え煩悶することもありました。

しかし最近強く思うのです。
「強い組織に居ることすなわち魅力的な人間なのか?
 それが私にとって魅力的な人の要件? 
 そんな簡単な訳ないだろう。」と。

履歴書的なデータでは浮かび上がらない、
その人ならではの言動、雰囲気、価値観、思考と嗜好。
深く広い個性が生み出す不定形の要素。
それらこそが相手を信頼し好きになることに影響を及ぼすと感じます。
ランキングをスタンダードとした演繹的な嗜好から、
「直観」「なんとなく」の世界への移行。
いや、バイアスの少ない少年時代を思えば、
回帰と言えるのかもしれません。

あなたは、
何を好み、何を嫌い、
今何に自分を捧げ、これから何を目指すのか。
それを訊いて、聞いて、感じ、
私の中のあなたを形作りたいと思います。

2010年4月13日火曜日

Lose your weight

先月親しい友人から
「ぽっちゃりしててかわいいよね」という
あまりに凄惨な褒め言葉を頂戴したことを契機に、
ダイエットを始めました。

結果、約3週間が経過した現在の時点で、
・平均体重:-2.5kg
・平均体脂肪率:-4%
といったところです。

今回のダイエットでは、
体重の絶対量を減らすだけではなく
身体の質も上げることも目標に加えました。
具体的には、体脂肪率を下げ相対筋肉量を増やすことです。
体重が減りその多くが筋肉で構成されて初めて、
引き締まった外見を獲得できるのです。

施策は基本的に、以下の二つの方針で実行しました。
1.運動する
2.食事で摂取する栄養を減らす
(※短期的な体重変化ではなく長期的な体質改善を企図しているので、
脂肪吸引といった外科手術は検討から除外しています。)

1.運動する
週3~4回程度フィットネスクラブに通い、
走り、筋肉に負荷をかけ、泳ぎました。
最初はあまり気乗りがしなかったのですが、
身体が目に見えて変わってくることを実感すると、
行くことが楽しみでしょうがなくなりました。

2.食事で摂取する栄養を減らす

2-1.食事の絶対量を減らす
間食を避けること、
口が寂しい時はガムを噛むこと、
食事間際に悲惨な環境の小説を読んで食欲を減らすこと、
(ポール・オースター著"In the Country of Last Things"など。)
お酒を飲んですぐ寝ること、
などを実践し少食に慣れるようにしました。

2-1.体重増加に繋がる栄養素を除外した食事を摂る
炭水化物を避け野菜を多く摂るなど食事の質も変えました。
副次的な効果ですが、そのために自炊するようになりました。

定量的な実現目標として
4月末時点で以下の数値を実現し、
・平均体重:-5kg
・平均体脂肪率:-10%
最終的には
・平均体重:-10kg
・平均体脂肪率:-15%
の達成を目指します。

定性的な実現目標は、アバクロの店頭モデルになることです。

2010年4月1日木曜日

April Fool

私ならまず「今日は一言も嘘を付かないから」と嘘をつきますね。

2010年3月18日木曜日

社内歯医者への改善要望

先月から会社施設内にある歯医者に通っているが、いくつか改善要望を抱いている。あまり良い印象を抱かなかったので、あえて偉そうな上から目線で言わせて欲しい。
1.初期診断時に治療のロードマップを示して欲しい
初診時にレントゲンを撮り口腔の現状を把握し、課題を抽出してくれるのは納得感があり良いと思うが、その後の対応が散発的に感じる。これからどうなるのか/何をされるのか、という不安を解消するために、あらかじめ治療の目標と具体的なステップを提示して欲しい。「あなたの歯のあるべき姿はこうで、この位の期間で、〜といったプロセスを経て治療していきます。見積もられるコストは・・・といったほどになります。」というように。
2.治療のPros/Consを明示した上で、複数の治療計画を示して欲しい
「プランAではこういうメリットがあるが、この点がデメリットとなります。プランBでは・・」というように、利点/欠点の明示を伴う複数の治療計画案を提示して欲しい。これが無いと、提示された治療案に対して中々腹落ちせず、他の選択肢があったのではと不安になってしまう。
3.治療の予約がオンラインでできるようにして欲しい
毎回電話で訊かなければ空きスロットが分からないのは顧客にとって心理的な障壁を生み、医院にとっても窓口の女性の業務負担を生じており、利点に乏しい。治療の予約や予約のリマインドメール発信機能を持ったwebサイトを実装して欲しい。患者専用のマイページで治療履歴を確認できるとなお助かる。
社屋近隣で唯一の歯医者という競争に乏しい環境に安住せず、ベストプラクティスを目指して頂ければ幸いである。

2010年3月10日水曜日

おいしそうな餅を描くには

先週からとある新興国を対象とした新規事業戦略案件の提案チームに入り、
新規ビジネスのモデルやアプローチ、ロードマップを考えながら提案書を作っています。
なかなか厳しい経験をしました。一週間で半年分ほど働いた気分。

これまでの仕事と違うのは、以下の3点。
・完全に新しいスキームの案件であり既存のメソドロジーや事例といった「落としどころ」がない
・視点がこれまでのオペレーションというミクロの世界から、国レベルの戦略という非常にマクロな視点へ上昇
・社内外、ステークホルダーが非常に多い

よく「絵に描いた餅」と言われるコンサル業ですが、
いざみんなでやいのやいの言いながら絵を描いてみると、
おいしそうな餅を描くこともなかなか大変なことですね。
誰も知らないVisionを描くには切れるインサイトを持っているだけでなく、あらかじめ広く深い知的インプットを持っていないとならない。今回いざ自分でやってみて勉強の足りなさを痛感しました。

たゆんたゆんしたおいしそうな餅を描きましょう。
手を伸ばしてくれるのなら、ちゃんと手元に届けます。

2010年2月22日月曜日

Leardership

先週末で完了したプロジェクトにおける、
初のチームリーダ経験から学んだことについて。

一ヶ月間の集中タスクでしたが上司から与えられた指示はただ一つ、
「最終日に規定の成果物が揃っている状態であればいい」というものでした。
よって、私個人の権限と責任の下やりたい放題に仕事を設計することができ、
短い期間ながら非常に多くのことを学ぶことができました。

リーダーシップに関して学んだのは大まかに言って以下の3点。
プランニング、雰囲気設計、メンバーのActivate.

1.プランニング
仕事の進め方の定義と進捗の管理についてです。
詳しくは以下4つの構成要素より成ります。

1-1.作業工程及び所要工数管理
最終的に完成させるべき成果物および期日と
作成物の難易度とメンバーのケイパビリティを考慮し、
何を、いつまでに、どうやって、誰が(誰と)、やるのか定義します。
工程管理表を作成しメンバー、上司と共有、握ります。

1-2.進捗管理
作業開始日及び完了日を工程管理表に記入し仕事の進捗及び予実を把握します。

1-3.リスク管理
進捗管理で把握した予実に乖離があれば要因を探り潜在的なリスクを洗い出し
必要があれば打ち手を定義し潰します。
またプロジェクトの関連他チームのタスクによる影響(前工程の進捗による影響など)を把握し
リスクが無いか確認します。

1-4.シナリオ管理
この点については十分に出来なかったため反省が残るのですが、
進捗に関して1.楽観的シナリオ、2.予測通りシナリオ、3.悲観的シナリオ、といったように
予め起こり得る展開を予測して対応策を講じておくべきでした。
複数のシナリオを予め持っては居なかったので、
やや場当たり的な対応となってしまったこともありました。

2.雰囲気設計
ただ一言、一緒に楽しく働くにはどうするべきか、に尽きます。

2-1.仕事内容を楽しむ
フリンジワークでもそれがプロジェクトの中でどういった位置づけであり重要性を持つのか定義し、
ただ手を動かすだけになりモチベーションが落ちることを避 ける。
定期的に「プロジェクトの意義」といったよりハイレベルの説明を行い意義付けと動機づけを行い
楽しく取り組めるようにする。
その仕事はレンガを置く仕事ではなく、大聖堂を作っているのだと。

2-2.仕事のやり方を楽しむ
どうやるのか、といったHowの世界でいくらでも工夫の余地があることを明示し
作業の楽しさと探究心の向上、及び効率化を図る。
既存資料で活用できるものはないか、自動化できるツールは無いか、
活用できる人材は居ないか、などやり方についても常に議論し
楽して楽しくやれる方法を探す。

2-3.楽しさを生める土壌を作る
上下関係は絶対に作らず、あくまで協働関係としメンバーと互いに意見を出して
チームのパフォーマンスを上げられるような関係性を構築する。
威張るのではなく、いじりいじられる関係性を構築する。

3.メンバーのActivate.
メンバーを刺激しプロジェクトワークでの成長体験を感じてもらいます。

3-1.診断
最初の一週間でメンバーの強みと弱みを把握し、
強みを伸ばし弱みを補うように仕事を進めるよう設計します。

3-2.実行
強みは褒め、「じゃあこれもやってみてよ」という形で静かにストレッチします。
弱みはやわらかく指摘し改善の必要性を述べ、
私自身が身を持って行うことで改善のイメージを持ってもらいます。
口だけにならないように私自身が手本を見せるようにすることが重要です。

3-3.レビュー
今日は何を学んだか、明日は何が起こりそうか、仕事に求めることは何か、
プロジェクトメンバーを見渡してイケてるところとイケてないところはどこか、
自分ならどうするか、といったことを帰路に面白おかしく話す。

今回の仕事で学んだことは以上です。
期日通りに仕事を完遂できたこともそうですが、
何よりもメンバーから
「楽しかった。また何か一緒にやりたい」
と言ってもらえたことが嬉しかったです。

2010年1月12日火曜日

赤い靴

10日に映画監督でもある奥秀太郎氏がディレクターを、
元宝塚月組スター娘役の映美 くららさんが主演を務める舞台、
「赤い靴」を鑑賞しました。
会場は池袋の東京芸術劇場小ホール。

氏の前作舞台、藤谷文子さん主演の「黒猫」は舞台としてではなく
舞台を撮影した映画・劇シネとして視ました。
虚構(妄想)と現実が入り混じりめまぐるしく両者を行き来する独特の内容は、
精度の高い舞台映像も相まり、毒気と幻想的な印象を残しました。

今作は二つの「赤い靴」が原作としてインプットされ編まれています。
一つは、野口雨情作詞の童謡。
両親に置き去りにされ、宣教師の下で育てられる少女の話。
もう一つはアンデルセンの童謡。
赤い靴を履いたために死ぬまで踊り続ける呪いを掛けられた少女の話。

ストーリー構成や技巧を凝らした舞台演出よりも、
とにかく、映美くららさんの「踊り」が素晴らしかった。
それは動作が意識的で体系化された「ダンス」ではなく、
踊らなければいられない故に身体が動いてしまう「踊り」でした。

ラストの裁判所で踊るシーン。
可憐な容姿、病的な熱意、しなやかな四肢の動き、
全てに引き込まれ強く心に残っています。

赤い靴を履いて両親に取り残された孤独な少女。
その孤独な心の拠り所としての思いを込めた踊り。

踊りを見て感じる感動の発生源は高い技巧だけではなく、
踊りの意味性と主体の熱意だということを認識した舞台でした。

http://www.okushutaro.com/stage/redshoes/index.html