2013年6月16日日曜日

真の競合は誰なのか?

最近ロジカルシンキングや戦略立案等、ビジネスのコアスキルに関する知識の棚卸しのために雑誌THINKを読み直している。とりあえず今回は牧田幸裕准教授の「競合」の定義についての連載について振り返りたい。

結論から言うと、競合とは、同業他社に限らず、ターゲット顧客と顧客にとっての提供価値が重なる相手である。

・すき家 vs ファミレス(ガスト、サイゼリヤ)
 ターゲット顧客:若年ファミリー
 提供価値:休日外出時の食事を安くおいしく過ごすこと

・ニンテンドーDS 英語学習ソフト vs 英会話教室
 ターゲット顧客:小中学生の子供を持つ母親
 提供価値:英語を興味を維持できる形で勉強できること

・海外出張者向け航空便 vs hangout, Skype, 電話会議システム
 ターゲット顧客:海外に拠点を持つ大企業
 提供価値:海外の従業員とリアルタイムでコミュニケーションできること

気がついたら想定外の異業種から殴り込まれ一気にシェアを落とすという状況に陥ることを避けるためにも、常に以下の二点に留意する必要がある。
1.セグメントごとにターゲット顧客を明らかにする
2.ターゲット顧客のライフスタイルと重視するvalueを明らかにする

加えて、地理(文化)・時代が異なればライフスタイルが異なるため、提供価値が異なることも考慮しなければならない。記事ではマルちゃん正麺が北米市場ではラーメンという主食ではなく、ヌードルの入ったチキンスープとして認知を得ており、提供価値:小腹を満たすスープ、ターゲット顧客:おやつや夜食を欲するビジネスマン、というように日本とは異なるポジショニングであったということが紹介されている。

また、事業領域の拡大から代替品となることで競合範囲が拡大するケースもある。先に挙げたニンテンドーDSやスマートフォン、コンビニやECサイトのように、幅広い提供価値を飲み込んでいくプラットフォームとして機能するプロダクトやサービスは、拡大の過程で衝突する競合が多岐に渡り広範囲に影響を与える。

スマートフォンについては、携帯音楽プレーヤー、コンパクトデジカメ、携帯ゲーム機、ボイスレコーダー、計算機、モバイルGPS、歩数計、電子辞書、小銭入れ、カレンダー手帳、家計簿、さらにはデスクトップPCもブラウジングやメールに留まるようなライトユーザーにとっては機能重複から競合となっていった。

コンビニについても度重なる機能拡張により、スーパー、酒屋、書店、ドラッグストア、惣菜・弁当屋、牛丼チェーン店、ラーメン屋、コーヒーチェーン店、スイーツショップ、銀行ATM、宅急便取次、DPE、雑貨屋、これらオフラインのサービスに加え宅配ビジネスが強化されることで、スーパー系のECやAmazonまでもが競合となっている。

加えて、記事で紹介されているように、将来Amazonや楽天が事業領域をB2CからB2Cに拡大すれば商社やミスミといった卸やASKULともぶつかることになるだろう。

シンプルだが重要な大原則として、環境変化のスピードに対応するために以下の点に留意し競合認定をアップデートし続けなければならない。
1.事業環境変化を予測しホラーストーリーを基に対応プランを策定する
2.変化の兆候が現れ次第、クイックに対応する

競合は、顧客と事業領域の変化に応じて動的に移り変わっていく。事業環境変化が激しい時代だからこそこの原則を心に刻んでおきたい。

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