2010年9月23日木曜日

30年後の中学校では「歴史」が重要科目になるべき

国家の長期的な成長戦略は何か。
次世代を担う人材を生む「教育」でしょう。
それでは将来の成長を実現するためにあるべき教育の姿とはどのようなものか。
結論から言うと、「歴史」が重要な科目になるのではないかと思います。

高速インターネットへの常時接続が常識となった世界が訪れることで、
学校教育のプログラムは歴史上最大の転換点を迎えるでしょう。
インターネットによって膨大な知識へのアクセスが容易かつ非常にローコストになり、
知識の多寡はもはやその人物の価値とはほとんど関係なくなる。知らなければググればいい。
膨大な知識のアーカイブへいつでもアクセスできるのだから。そういった常識がより顕著な世界が到来します。

そんな時代に学校教育は、知識を詰め込むよりも「今どの知識が、どの程度の確度で必要で、いかに使うべきか」
という知識の使い方を習得する場となるでしょう。いえ、そうならなければならない。

重要な科目は何になるのか。
数学や化学などの理系科目は変わらず重要であり続けるでしょう。
元よりアウトプット志向の学問ですしテクノロジーの進歩にも適合する。
逆に比較的不要になるのは英語でしょう。
ほんやくコンニャク的なテクノロジーが授業による習得を陳腐化する可能性が高い。

ここで台頭するのは歴史だと思うのです。
もちろん、年号などの資料集にある知識を詰め込むやり方ではなく、
アウトプット志向のケーススタディ的な授業が。

将来の授業では知識は簡単にさらう程度に留め、
各イベントごとに「当事者」となって戦略的な判断を思考し議論を行うようになる。
より変化が早く不確実な状況で生きていく下地とするために。

例えば以下のような点について議論し思考を深めていく。
・桶狭間の戦いの背後にあったオプションとそれぞれのメリット・デメリット、
 実行にあたってのリスクは何であり、最終的にあなたならどう判断するか。
・ローマ帝国や元など強大な帝国が支配範囲を拡張するために前線への兵站を繋ぐにあったって、
 ボトルネックとなるものは何か。
・征服地域から発生する反乱の類型と対処方法は何か。(君主論を参考に)
・スキピオとハンニバルの戦略の類似点と相違点は何か。
・あなたがナチス第三帝国の有力閣僚でありながらホロコーストに強い疑問を抱くようになった人物だったなら
 どのような葛藤を感じいかに解決して行くのか。

歴史を当事者として振り返り、各シチュエーションで考えるべき論点を見出し、
場合によっては対立する価値観を擦り合わせ、意思決定していく。
それが将来不確定な意思決定を行う際に役に立つ。

参戦可否などの戦争判断はいつどのマーケット攻めるかというマクロな競争戦略に、兵站はSCMに、
戦略論は限られた資源(ヒト、モノ、カネ、時間)でいかにして勝利を得るかのミクロな戦略論に、
征服地の治世は異文化コミュニケーションやPost M&Aに、ファシズムとの葛藤は自発的なモラル観への示唆を育む。

このような授業がより知識の使い方が求められる将来の教育の根幹となれば、
環境変化が加速しても国家は継続的な成長を遂げられるのではないかと思います。