2014年3月23日日曜日

ミヒャエル ボレマンス:アドバンテージ / Michaël Borremans: The Advantage

ベルギーの作家ミヒャエル ボレマンスの個展を見に原美術館へ。静謐な雰囲気ながら力強いタッチで描かれた人物画が印象に残る素敵な展示だった。リヒター然り、この作家さんのようなトラディショナルな静物画のようで現代的な空気感がある作品はとても好みだ。


奥様はネットワーカ

ブロガーな奥様が勤める大学の工学部で起こる連続殺人事件。
大半が登場人物/非人物の独白で構成されており、視点が目まぐるしく入れ替わる。勘の良いミステリーファンならこの時点でトリックに見当が付くのだろうが、森博嗣ファンながらミステリーファンにはなりきれていない残念な私は最後まで気付かなかった(まあ、その分楽しめたとも言えるか)。コジマケン氏のイラストがポップで知的でとにかく素敵で、氏の絵と合わせて一つの作品になっている。しかし、ネットワーカである私を殺したのがつまるところ孤独であるとは、なんという皮肉だろう。

奥様はネットワーカ―Wife at Network (ダ・ヴィンチブックス)奥様はネットワーカ―Wife at Network (ダ・ヴィンチブックス)
森 博嗣

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2014年3月22日土曜日

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

Amazon創始者/CEOジェフ・ベゾスの歩みとAmazon成長の歴史を紐解いた一大伝記。驚異的な成功を納めた企業の成長過程というだけあって、EC業界に留まらず全てのB2C企業が知っておくべき示唆に溢れている。事実に基づく詳細な記述が淡々と膨大に続く退屈になりかねない構成ながら、コンテンツの圧倒的な面白さに惹きつけられ一気に読み進めてしまった。

大別すると以下の3点が心に残った。

1.徹底的な顧客第一主義
・「エブリシング・ストアの実現」というミッション
・「我々はモノを売って儲けているんじゃない。買い物についてお客が判断する時、その判断を助けることで儲けているんだ」というインサイト
・「利益率が低ければ顧客は集まるし競合は敬遠するため市場を守りやすい」という独自の哲学
・常にコスト削減の方法を探し、低価格という形で顧客に還元する(サム・ウォルトンの影響あり)

2.既存の枠組みに捕らわれないイノベーション
・テクノロジードリブンのヘッジファンドD.E. Shaw & Co.がファーストキャリア
・頭脳明晰な人材を集めることが全て
・Kindle開発では本社から離れた東海岸に自律的な立ち上げ準備組織を設置

3.容赦無いExecution
・競争的でモーレツに働くカルチャー。意見書を読むことから始まるMTG。
・競争相手は完膚なきまでに叩き潰す
・「我々に大きな強みはない。だから、小さな強みを編んでロープにしなければならない」

最も興味深かったエピソードがこれだ。
競争優位性の根幹である物流網を構築する際、最初はWalmartの人材を引き抜いて作らせたが多品種少量受発注のロングテールモデルには対応できず限界を迎える。
プリンストン大学主席〜MIT工学/MBAのデュアルディグリーという凄まじい経歴のジェフ・ウィルケを32歳の若さながら総責任者として登用。彼は小売物流の専門家ではなく科学や工学の専門家を集め始める。頭がいい人物10人のリストを作り、その全員を集めたという。そして小売ではなくむしろ製造業の製造過程を参考にして、フルフィルメントセンターを構築した。
これぞ既存の枠に囚われないイノベーションなのだろう。最高にクールだ。

ジェフ・ベゾス 果てなき野望ジェフ・ベゾス 果てなき野望
ブラッド・ストーン 滑川海彦(解説)

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