2013年5月14日火曜日

ワークショップにおけるファシリテーションのポイント


高校生や大学生へのワークショップで、経験やスキルが大きく異なる相手に向けてファシリテーションを行うという貴重な経験を積むことができた。備忘メモとして気づいた点を書き残しておきたい。

参加者のスキル/知識に応じてサポートする範囲を調整する
参加者とのコミュニケーションから以下の点を検証し、サポート範囲を調整
・意見をまとめるまでのアプローチが考えられるか?
・イシューを考える枠組みを作ることができるか?
・各枠組み内のキーとなるアイディアが出せるか?
・抽象的なアドバイスを具体化できるか?
・具体的なヒントを要するか?

検討時の仮定は具体的に、かつ当事者意識を持てるように設定する
・温暖化したらどうなるか?→平均気温が5℃ずつ上がったらどうなるか?
・10年後のテクノロジーは?→10年前の携帯は白黒でようやくメールができるくらいだった。今後10年は更に上回る早さで変化が起こるのでは?
・自分が(超具体的なロール)だったらどうする?一日の過ごし方を語って想像を膨らませる。

アイディアは深みと幅の二軸で抽出する
・深み:現象→課題→打ち手(適応策/対応策)という問題解決への流れ、具体化、アイディア間の連結
・幅:アイディアの網羅性、アナロジー、プラス/マイナス面の影響

突飛なアイディアが出るよう意識的に誘導する
ブレイクスルーを実現するには既存の枠外の冗談のようなアイディアが必要
・大喜利的な軽い雰囲気を演出して「ネタ」を出させる
・現状や実現性は別として、素直に理想形を想像させる
・冗談のような外れ値的アイディアに着目して膨らませる

具体→抽象とまとめつつ、最後提言に仕立てる際もう一度具体に戻す
・机上の空論ではなく、地に足が着いたアイディアとする
・実行するステップが具体的にイメージできるようになる
・反論しやすいように具体的なソリューションを挙げ、反論を取り込んでブラッシュアップする

2013年5月3日金曜日

ブルックリン・フォリーズ


妻と離婚し、娘と喧嘩別れし、癌を宣告され、静かに人生を終えようとブルックリンに来た主人公ネイサンが生きる気力を取り戻していく再生の物語。
近作では多くの場合過酷な状況をもたらしていた運命が、万事塞翁が馬と言えるほど前向きな方向に働いている。著者自身が住んでいることもあり、様々なバックグラウンドの人々が混在するブルックリンへの愛情が物語に心地良いリズムをもたらしている。
きっかけが意思を取り戻させ、状況を変える行動となり、やがて再生に向かう、そんな姿が描かれた本作はこれまでの作品の中でも際立って幸福な読後感を得られる。

ブルックリン・フォリーズブルックリン・フォリーズ
ポール オースター Paul Auster

新潮社  2012-05-31
売り上げランキング : 80295

Amazonで詳しく見る by G-Tools

2013年5月2日木曜日

ブラフマンの埋葬

具体的に何者か語られない謎の生き物"ブラフマン"と、一芸に秀でた人々がインスピレーションを求めて滞在する宿に勤める青年の生活が語られる。
物哀しく行き場のない雰囲気の中、タイトルから察せられる結末に向かって物語は静かに進行していく。この胸の空白のような痛みを伴う静けさこそが小川洋子の本質なのだろう。改めてそう感じさせる作品。
アメリカ出張の飛行機内で読書灯を頼りに読み終えたが、ひそやかな非現実感に飲まれ、ひととき自分の状況を見失ってしまった。

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)
小川 洋子

講談社  2007-04-13
売り上げランキング : 49145

Amazonで詳しく見る by G-Tools

2013年5月1日水曜日

オキシペタルムの庭

ふとしたことから恋人の秘密を知ってしまい、どのように向き合うべきか揺れる女性の姿が描かれる。これまでの諸作で淡い恋愛を紡いできた著者だが、今作はより踏み込んだ視点で、意思や思いが生じる根が語られている。
ただ普通に幸せになりたいという思いや、良い人間でありたいという思いの背後には、皆と同じように幸せにならなければならないという「呪い」があると示唆される。恋愛小説のようでいて、自意識の境界が問われている。

オキシペタルムの庭オキシペタルムの庭
瀧羽 麻子

朝日新聞出版  2012-10-05
売り上げランキング : 571600

Amazonで詳しく見る by G-Tools