親を経験した誰もが一家言持っており、さらに特殊な条件下の極端なベストプラクティス(東洋経済オンライン"「灘→東大」3兄弟の子育てに学ぶ5つのコツ"等)が持て囃される、科学的アプローチとはほど遠い日本の教育論。そんな中で本書は、ランダム化比較試験による実証研究が進んだアメリカの事例を紹介し、主観的な(感情的な)判断に依拠した通説を反証していく。そんな"ヤバい経済学的"のようなアプローチで編まれた内容は、これまで教育を受けた身として感じていた違和感を払拭する痛快なものだった。
日本の教育現場で重視されている平等主義はデータに基づく教育研究&政策の発展を阻害するばかりでなく冷たい人間を育成する危険性すらある、という背筋が凍るような話や、子どもの学力を向上させる上で効果的な変数やインセンティブの効かせ方など、教育について考える上で検討する論点は大体網羅されており、かつ実践的な示唆に富んでいる。将来子育てに向き合う前に読んで本当に良かったと思える、非常に有益な一冊。
「学力」の経済学 中室 牧子 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015-06-18 売り上げランキング : 175 Amazonで詳しく見る by G-Tools |