2014年6月19日木曜日

世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書

デイリーポータルZのウェブマスター林雄司さんの仕事の流儀を紹介した一冊。
個人的に、ここしばらく読んだビジネス書の中でベスト。77もの仕事でラクするためのメソッドが紹介されているが、それらは決して手を抜くための抜け道的なものではなく、心の平静を保ったまま効率的に仕事を進めるための立派なノウハウである。
「記事には情報か共感があれば良い」、「知識でおびき寄せてエピソードで引きずり込む」、「自由度が低い方が人は集まる」、といったデイリーポータルZの骨格となるコンセプトは、B2Cマーケを考える上で普遍的に役立つもののように思える。
ただでさえ情報過多のウェブで存在感を出し続けるには、ユニークなコンテンツを提供し続けなければならない。そのアイディアをひねり出すためのコンセプト、仕組み、そして企画の立て方は競争力のあるサービスを作る上で欠かせない。実は真面目なコンテンツと力の抜けた文体のバランスが心地よくさっくり読めるが、意外に深く残る。折にふれて読み返したい。

世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書
林 雄司

扶桑社  2014-04-10
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2014年6月7日土曜日

女のいない男たち

村上春樹さん9年ぶりの短篇集。様々な理由から親密な関係にある女性を失った男たちの姿が描かれる。女のいない世界に入り込むこと、アンモナイトとシーラカンスと共に暗い海の底に沈むような喪失感に身を浸すこと。全体に通奏低音として響くモノトーンの喪失感は、トニー滝谷を彷彿とさせる。
若くポップなトーンで気持ちの良いアクセントとなっている「イエスタデイ」が特に印象に残った。文藝春秋に掲載されたオリジナルから削除されてしまった、関西弁版イエスタデイの歌詞については残念に思う。あれはフルコーラスあったからこそインパクトがあった。

女のいない男たち女のいない男たち
村上 春樹

文藝春秋  2014-04-18
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頭脳勝負

渡辺明永世竜王による、棋士の基本的な考え方・生き方を通じて将棋の世界を紹介した一冊。序盤/中盤/終盤といった局面での集中力の配分や、実戦の棋譜の振り返りはプロの考え方が垣間見え非常に興味深い。単に玉を囲えば良いというわけではない攻守のバランスや一手遅れることの致命的なロス、そしてその緻密な闘いを可能とする驚異的な頭脳と強いメンタル。深い敬意を抱かずにはいられない。

頭脳勝負―将棋の世界 (ちくま新書)頭脳勝負―将棋の世界 (ちくま新書)
渡辺 明

筑摩書房  2007-11
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