ソニーとグーグル。対照的な昨今のパフォーマンスにも関わらず相通じる理念、そして著者の敗戦を招く大組織の不合理、これらが読みどころとなっている。中でも、ソニー設立趣意書に刻まれた理念への言及が興味深い。
設立趣意書が示唆する、ソニーの限界と素晴らしさ
「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」(会社設立の目的より)
「極力製品の選択に努め、技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。また、単に電気、機械等の形式的分類は避け、その両者を統合せるがごとき、他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行う」(経営方針より)
この他社の追随を絶対許さざる境地に達したエンジニアの誇りが、ソニーのブランド力を支えていた。本書からは、娯楽家電の競争のポイントがハードからソフト(アプリ)へ、やがてプラットフォームへと移行していく中、上記のコンセプトを体現した過去の圧倒的な成功体験と、外部環境に合わない切り分けとなってしまったカンパニー制が生む縦割りの弊害が、ソニーの競争力を奪っていったことが伺える。
そんな、著者と共に敗退していくソニーとは対照的に、ソニーの本質を体現している企業として新天地であるグーグルが挙げられる。社会的利用度の高いプロダクトを生み出す、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想の職場として。この点に感じる哀しさを、単なるノスタルジアとして片付けないことが、急速な外部環境の変化への対応を迫られる多くの日本企業にとって、重要なことなのではないだろうか。
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