バスジャック事件にシリーズの主要キャラクタが巻き込まれる。
バスという閉じた空間、「密室」コンセプトの拡張ケースか。
ポイントは以下の三点。
1.「犯人グループ」によるバスジャック
2.バスジャックなのにトリック
3.自殺の位置づけ
1.「犯人グループ」によるバスジャック
バスジャックが犯人の想定通りに進行しなければ、外部に居る仲間が爆破テロを起こすという、ある意味ちゃんと保険がかけられている犯行。この車中の犯人さえ何とかすればいい、という安易さを回避している点が面白い。
2.バスジャックなのにトリック
犯人について、居場所、行動、誰なのかが極めて明確に特定されるバスジャックという状況にも関わらず、ちゃんとトリックは仕掛けられてる。この仕掛ける視点の巧さには唸らされる。
3.自殺の位置づけ
ロジカルなクラフトマンシップを発揮して作り込みながらも、こっそりと抽象的なテーマを通奏低音のように織り込む森先生。今回のテーマは「自殺」であるように思える。引用されたヘッセのシッダールタ「死のうとするものはみな永遠の生をみずからの中に持っている。」と、作中のあるキャラクタの「そうだ、自分は自由。これからも、ずっと・・・」。単純に逃避とも悪とも整理できない、固定された穏やかさを感じさせる。
対比として、わからないから、もう少し生きるという判断もある。
気持ちを固定できないから、まだ揺れているから、もう少し生きる。
その生温い温度は、死を内在した生として、とても素直な感覚であるように思う。
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