2010年11月14日日曜日

BCG流競争戦略

BCGのシニア・パートナーによる、金融恐慌後の長期的停滞が見込まれる先進国経済の下、どういった経営戦略を立案すべきかの示唆を、過去の不況下(アメリカ大恐慌、日本の失われた10年)に成長した企業のケース・スタディを通して抽出する試み。
過去のケースで取り上げられた優良企業から抽出される戦略の要諦は、 簡単に言えば、「好況期にしっかりと守りを固め、競合が尻込みする不況下に積極果敢に攻める」ということ。
・好況時には浮かれず、「守り」を固め筋肉質な組織へ
この逆張りの視点のうち、好況時にしっかりと守りを固める、という点がとりわけ重要だと思う。 好景気時にも関わらず、不採算事業の撤退とコストカットを判断した信越化学工業の毅然とした判断には敬服する。 場合によっては機会ロスになりかねない撤退の判断を迅速に行い、強みに経営資源を投入することで、磐石な財務の下不況下を勝ち抜くエッジとしている。
・不況下でも「人材」という筋肉を削がない
また、大恐慌時のIBMの福利厚生の充実により人材を重用する戦略も、事業、財務、人材が揺らぎ無い状態でなければ勝ち上がれない原則の下では、 むしろ王道であるように感じる。体力があることが前提だが、今日の従業員を変動的な人件費として扱う戦略も、 程度が過ぎれば筋肉のない骨ばかりの組織となり、ダッシュ力が無くなっていくジリ貧のスパイラルに陥るのだろう。 今の私の個人的な関心分野「人材に見限られる企業」の処方箋と言えるかもしれない。
・政府の関与に商機を見出す
将来の事業環境を見据えた視点では、活発化する政府の関与を活かして商機を見出していくことが、(業態は限られるだろうが)重要となる。 経験から言えることだが、政府の介入によるビジネスで成功するには、コンソーシアムや各種審議会への参加により、 トップマネジメントが政策決定において存在感を発揮していることが非常に重要となる。 この点に関しては、先進国だけではなく、元々政府のコントロールが強い新興国の攻め方においてさらに強調されるだろう。
歴史は繰り返すことを感じつつも、「勝って兜の緒を締めよ」が肝であることは、いつの世も変わらない。

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