2010年4月21日水曜日

1Q84

読了したので感想を。エッセンスは以下のように感じました。
1.リアリティを失った世界と元の現実という複層的な世界構成が、幼い頃より連なる個人的で宿命的な希望を醸成する。
2.形而上的な、あるいは暴力的な試練の無いところに希望はない。
(逆に言えば、希望には試練が必然的に付随する。)
3.どこの、どのような世界に物理的に身を置くことになろうとも、「あなた」と手を取り合えることこそが私にとっての世界の全てである。
作品のバックグラウンドにあるのは、現代の、リアリティを失った世界認識であるのでしょう。
「ぼくが今のアメリカに行って、人々と話していて感じるのは、我々が生きている今の世界というのは、実は本当の世界ではないんじゃないかという、一種の喪 失感-自分の立っている地面が前のように十分にソリッドではないんじゃないかという、リアリティの欠損なんですね。」
(雑誌 Monkey Business vol.5 村上春樹インタビューより)
リアリティが欠けた世界、試練として現れる非現実的な暴力の影、そんな中でも致命的な愛情を信じること。世界に依存しない個人的な希望として。
とても同時代的な空気を孕みながらも、同時にとても古典的な幹を持った作品であると思います。
1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
村上 春樹

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