2013年1月17日木曜日

喜嶋先生の静かな世界

森先生の工学博士/大学助教授としての側面が物語という形を借りて紡がれた、研究論。これまで他作品や新書で度々語られた研究への思いが、非常に優秀な研究者である喜島先生というキャラクタを介して、ごく素直に語られている。思考の精度も持久力も欠ける私としては、理の探求が全てのこの静謐な世界はあまりに眩しく、強く憧れてしまう。

S&Mシリーズ犀川創平のこの発言も、本作品の趣旨に通じるものがある。森先生は諸作品の中で研究に対する哲学を散りばめており、常々考えさせられる。
「だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。 音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。 人間だけが役に立たないことを考えるんですからね。 そもそも、僕たちは何かの役に立っていますか?」
(「冷たい密室と博士たち」)


喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)
森 博嗣

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