2011年1月21日金曜日

宝島社の宝は、マーケティング力のある人材である

一月の嶋口・内田研究会に参加してきたので、自分向けリマインド及び他者向け共有用にメモ。「出版は文化」という既成概念にとらわれない「商売」としての企画を立案できること、そして企画を実行できる「フラットなオーナー企業」という組織特性が強みか。

嶋口・内田研究会『宝島社のマーケティング戦略』
(講師)宝島社 マーケティング本部 広報課 課長 桜田 圭子(さくらだ けいこ)氏

<勉強会概要>
今年、女性ファッション誌『sweet(スウィート)』が100万部を3度突破、10月に創刊した40代女性誌『GLOW(グロー)』創刊号も発売4日目で完売するなど、ファッション誌販売部数の出版社別シェアでトップを走る宝島社。急伸の背景にあるマーケティング戦略と、様々な企業とのコラボレーションで、出版業界だけでなく様々な業界を活性化している宝島社の取組みについて紹介する。

<サマリ>
1.雑誌のライバルは雑誌ではない
雑誌を習慣的に読む人は少ないため、市場を拡大させなければ売上は増えない。なので、読者ターゲットは「普段雑誌を読まない人」。あえてアンパンマンなど普段雑誌と接点が無い人向けにCMを流し、競合を問われればスタバやコスメだと答える。

2.出版の既成概念にとらわれず、「商品」として付加価値を上げていく
編集部で企画・デザインする「ブランドアイテム」(付録)により、従来の雑誌には無い訴求力を発揮している。

3.迅速な施策の実行が可能なのは、フラットな社風のオーナー企業だから
クリエイティブな仕事はピラミッド型ではできない。中途入社が大半の異業種からの転職が多いことで生まれる自由な発想を、プロデュース、コーディネート型の社風が推進し、(企画から製造まで、一人の編集者が最後まで周りを巻き込んで担当する)オーナー社長が即座に決裁・実行に移す。加えて社員想いの経営スタイルがより基盤を強化している。(社内報のサブタイトルで「社員は宝だ」と掲げているほどに) 

<詳細>
■スピーカープロフィール
・98年広告代理店入社
・00年宝島社入社
・06年早稲田大学大学院商学研究科へ
  (マーケティングを体系的に学びたかったから)

■宝島社プロフィール
・今年創立40周年
・当初は地方自治体のコンサル企業だった
・創業者社長のオーナー企業
・コミュニケーション重視の、明るくフラットな社風
・従業員200名で、7割が中途入社
・売上高327億円(過去最高)
・毎月500万部発行
・アンメットニーズを刺して市場を創出していく文化

■主なヒット誌の特徴
・CUTiE:日本初のストリートファッション紙としてヒット
・InRed:属性別(既婚、未婚、キャリア等)ではない一般30代女子へのファッション誌としてヒット
・mini:旧来無かったTシャツ、スニーカー、ジーンズといった超カジュアル誌としてヒット
・steady.:OL通勤服に特化してヒット
・GLOW:属性別(既婚、未婚、キャリア等)ではないマス向け40代ファッション紙としてヒット

■出版社におけるマーケティング
・以前は勘、度胸、センスの世界で、戦略的なことは何もやってなかった。
大学の経営戦略の授業で自社を取り上げてマーケティングの課題を抽出。
  社長に提案すると意外に刺さりマーケティング改革へ。

■マーケティング会議の導入
・社員全員でマーケティングについて知る必要があると判断され、
  社長、書店営業、広告営業、編集長、宣伝、広報、WEBといった部門横断的なマーケティング会議が設けられた。

■全社戦略
一番誌戦略
  広告市況が構造的に悪化しマーケットで一番でないと広告がつかなくなっていたため、業界一位を目指す。
出版は商品である
  出版界には「出版は文化であって、商品じゃない」という考えがあった。
  しかし宝島社はモノ売ってカネ貰う以上は商品だろう、という認識の下、
  いかに商品としての付加価値を高めるかについて考えを尽くした。
雑誌を読まない人をターゲットにする
  習慣的に雑誌を読む人は少ないので、雑誌を読まない人をターゲットにしようと思った。

■4P
・Product
2004年から毎号ブランド付録をつけることにした。
この「ブランドアイテム」は編集がすべて企画からデザインまで行い、ブランドは全く関わらない。編集部がデザインしているのは、ブランドのファン以外を取り込むため。

付録の人気の秘訣は、
-雑誌の読者の好み(色、柄、形等)とマッチするように、企画・デザインしている。
-月間誌ならではの限定感を出している。
-表紙を商品のパッケージとして捉え、コンビニの雑誌棚に刺したときに付録が見えるようにレイアウトしている。(上から12cmの法則)

・Price
これまでは「(コストの積上げ+利益)/想定部数」で決めていたため、一般的な感覚よりも高い価格が余裕で付けられていた。「読者の感じるお買い得感」で決めることにした。表紙やボリュームは毎月変わるので、毎月定価を変えている。

・Promotion
「クチコミは、期待値とのギャップで生まれる」との考えより、顧客が驚く仕掛けを作っていく。

>対読者
「いかにテレビの情報番組で取り挙げられるか」を目的にイベントを仕掛けている。
-日本ファッションリーダーアワード、みたいな賞を作って取材を呼ぶ
-Sweet 107万部突破記念として渋谷で無料ショッピングシャトルバス
-GLOW創刊イベントとして銀座松屋で40代女性400人にルビーをプレゼント
 (※テレビ映り的に40代女性が並んでいる絵を欲したため)

>対広告主
Panasonicの電動歯ブラシ開発に編集者の意見を反映させたりと、広告主の商品企画支援という形で食い込んでいるケースが増えてい

>対書店
宝島社書店という書店内書店を作り、5感に訴えかける売り場(アップテンポの音楽や雑貨屋みたいなバック展示)を提供。その間紀伊国屋の売上が二倍に!普段書店に来ないお客さんを引き込むことができた

・Place
衰退していると言われるが、実は既存の出版流通はかなり魅力的
整備された流通網、全国のカバレッジ、好立地等強みがある。
※電子書籍は出版社が儲かるビジネスモデルではないし、異業種の競合がひしめくので算入を検討していない。

以上の結果、
女性ファッション誌売上高:1位、広告収入も業界1位!
マーケティング導入により売上237%アップ!

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